2013年4月24日水曜日

読むと役に立つかもしれない本

愚痴とかなんとかシリーズ(シリーズだったのか?)は、私が乳がんに対して漠然と考えてることを書いているんですが、今日はちょっと趣を変えて。

医療統計はじめました

いろいろと治療法に関して検索などをしていると海外の論文などをちら見することも増えますが、文系の私が一番読んでいて苦労するのは、英語ではなく、実は統計です……。

統計学が最強の学問である

西内 啓 / ダイヤモンド社


最近のベストセラー本で上記の『統計学が最強の学問である』というのがありますが、巷では統計学が流行っており(統計学が流行る背景ももちろんあるんですけど)、それに乗りつつちょっと学び始めてみました。この本にもあるのですが、そもそも統計学というのは、公衆衛生学とか疫学が生みの親です。

だったら、医療に関する統計について知った方がいいかなと思い、その入門書として手に取ったものがとてもわかりやすいものでした。これから乳がんに関する論文を読むために、統計学を学びたいなーと思った方は、ちょっと目を通してみてはいかがでしょうか? 少なくとも、他の方が書いている闘病Blogを読んで一喜一憂するよりも、きちんとした情報を得られるようになった方が気が楽になることもあるのではないかと思うのです。

宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))

佐藤 俊哉 / 岩波書店


この本以外にも、統計学について10冊ほど読んでいるところです。実はこれは最近の仕事でもあり(治療費を稼ぐために! もう仕事に戻ってます・笑)、ある程度読み終わったら、まとめの記事にする予定です。記事は公の場に出すことになりそうなので、またそれはその時に。私の統計学の知識もきっと役に立つぐらいになっていることを祈って。

遺伝子医療の事実と希望から、身体の将来を予測する
また、何度かOncotype DXの話を書いていますが、実際にこのような遺伝子を使ったパーソナル医療の全体像をつかむのに、最適なのではないかと思うのが次の本です。遺伝子医療の事実と希望が非常に読みやすい形でまとまっている良書です。

遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える

フランシス・S・コリンズ / 日本放送出版協会



ちょっと前に国際関係や外交政策に関するジャーナリストのトーマス・フリードマンの『フラット化する世界』という本がヒットしたことを覚えているでしょうか?IT(情報テクノロジー)の発達により、階層や地域の壁が取り払われる(ボーダレス化する)といったことを説いた内容でした。実際に医療もそのフラット化する世界の一部に取り込まれており、現在、遺伝子医療にはどんな人でもアクセスが可能になりつつあります。しかし、その一方で、フラット化された世界においては、人それぞれに情報が与えられる機会が均等になるわけではありません。がんは情報戦であるとよく言われますが、フラット化された世界では、人は主体的かつ能動的に情報を入手し、それを活用することで、初めて恩恵が受けられるのです。そして、医者との関係をフラット化するには、患者として積極的に治療に関わる必要があるのではないかと思っています。

ちなみに、この本の中にも、遺伝子発現解析により抗がん剤を利用せずに済んだ乳がん女性の話が出てきます。アメリカの話のようなので、恐らく、ここで言う遺伝子発現解析とはOncotype DXのことでしょう。その他、乳がん関連では、遺伝子検査をして(Dx)処方する(Rx)薬品として、HER2陽性乳がんのための、分子標的薬のトラスツズマブが取り上げられており、また、抗エストロゲン薬のタモキシフェンは、体内でCYP2D6によって酵素が作られない患者には薬効がないため、おそらくはこれに対するDxRxが近い将来行われるようになるだろうといった話が記されていました。最後の話は、最近よく聞きますね。

なお、この本の著者は、アメリカでヒトゲノムプロジェクトを率いていたトップサイエンティストなのですが、一般向けに書き下ろしているというのもあり、どの話も文系の私でも非常にわかりやすく、かつ知的好奇心をそそる内容です。「人は誰もがたくさん遺伝子的欠陥を抱えて生まれていることを認識しておこう。完全な人間など一人もいないのだ」という一節が特に心に残ったのですが、「完全な人間など一人もいない」、これこそが生命の本質を表しているのではないでしょうか。そして、遺伝子的欠陥はその人ごとに違うため、ある人に合う治療がある人には合わないということがあるということ。画一的な医療を受動的に受けるのではなく、まずは人体そのものに対する考え方を私たち個人個人が変えて行かなくてはならないということを強く感じました。

どうしても病気になると、その病気のことばかりについて狭い範囲で調べてしまうと思いますし、それは大切なことです。しかし、一歩下がって、自分が受けている(もしくは受けようかと思っている)治療をとりまく全貌というのを広い視野から検討することで、自分にとってよりよい選択肢を選ぶことができるようになるのかもしれません。

話はちょっと戻りますが、海外の論文を読む際は、もちろん英語も最初は単語がわからずに苦労してましたが、読んでいるうちに頻出単語は覚えてくるので、最近はExtractやAbstractぐらいであれば、それほど苦労せずに読めるものも増えてきました。その中で最近読んで知ったのが、the Ki-67 labeling indexの「Ki」と「67」の意味。治療そのものとはまったく関係ないのですが、ちょっと面白かったので。

The Ki-67 antigen was originally identified by a German group in the early 1980s, by use of a mouse mAb against a nuclear antigen from a Hodgkin's lymphoma-derived cell line. This non-histone protein was named after the researchers' location, Ki for Kiel University, Germany, with the 67 label referring to the clone number on the 96-well plate.

��訳)Ki-67抗原はもともとホジキンリンパ腫由来細胞株から核抗原に対するマウスモノクローナル抗体を使用することにより、1980年代初頭にドイツのグループによって同定された。この非ヒストンタンパク質がKiと名付けられたのは、研究者がいた場所である、ドイツのキール(Kiel)大学にちなんでおり、67ラベルは、96穴プレートのクローン番号を参照している

ということで、Kiはキール大学から、67はプレートのクローン番号だった、というオチです。KiってHER2みたいな長々とした名前(human EGFR-related 2/nue)の頭文字みたいなもんなんじゃないか?と思っていた私にとっては、へーへーへーと、どうでもいいうんちくがまた増えてしまった……。

ちなみに、96穴プレートというのは、こんなやつです。こちらも、へーへーへーって感じですな。クローン番号というのは、どうやらこのプレートを使う際には、必ず番号が振られるようなのですが(クローンを扱っているからクローン番号なんだと思います)、それが67だったということみたいです(この辺はあやふやですみません……)。

なんてどうでもいいうんちくを、どんなに調べたところで、私の乳がんが再発しないってわけじゃないのがまた腹立たしいことです(笑)。あと、本に関してですが、基本的に私個人は、闘病を扱う書籍は有名人が生還するか、もしくは一般人なら死なないと売れないというのが(ビジネスライクに)、また腹立たしいことなので、読む気もしないし、このBlog上で扱う気もしません。自分が死に直面すれば、話は変わるかもしれませんが。

0 件のコメント:

コメントを投稿