その後、ちょこっと番外編として、個人的に妊娠/出産に関してと、検診の妥当性みたいなものについて加えていました。すでにホルモン療法はスタートしており、その治療がどういうものなのかはわかっていましたが、自分にどんな影響を与えるものなのかを深く考えていたということはありませんでした。仕事にも戻って、前と同じように働いていた時期です。
早いもので、乳がんと告知されてから約2年半たったというのもあり、今一度、ホルモン療法の折り返し地点として(本当はまだ3年近く残っているのですが)、思うことを書いてみようかと。
「私」にもフォーカスを
乳がんと診断され、初期治療を始めた当時は、病気そのものに対してフォーカスを当てて考えていました。乳がんとはどういう病気なのか、どんな治療が行われるのかといった、病気になったのは私で、私に対して行われる行為でもあるのですが、乳がんの治療やそのものについて、自分で調べたり、考えたりしていたのです。その理由として、前にもちょっと書きましたが「乳がんになっても私は何も変わらない」と思いたかったというのがあります。病気とは自分なりに向き合うことで、乗り越えられるとみなしていました。妊娠が難しくなるといったことに関してはもちろんショックでしたし、自分の発病した微妙な年齢についても書きましたが、今行っている治療が自分に何を及ぼすことになるのかということについては、きちんと考えていませんでした。
治療として行っていることの副作用に関して、自覚がなかったわけではありません。ただ、前にも書いたことがありますが、人間というのは、初めて体験することに思った以上に鈍感だったりするものなのです。いわゆる更年期症状と呼ばれるものが自分にも起こっていることはわかっていましたが、なかなか「私」に起こっているということが、症状が出ているにも関わらず受け入れられませんでした。「いわゆる更年期症状があるけど、まあ、私はなんとかやり過ごせる」「たぶん私の症状なんてたいしたことないし、みんなこんな風だろうし」なぜかそんな風にまるで他人事のように思っていたのです。
もちろん、治療の副作用は人それぞれで、まったく出ない人というのもいらっしゃると思います。私の場合は、ホルモン療法しか受けていないので、同じ乳がんの方であっても、状況がまったく違う方もいらっしゃるとも思います。副作用があっても、私が願っていたようにやり過ごすことができる人だっているだろうし、生活や仕事に影響がないように専門家の診断をうけたり、何かしらの方法をすでに取っている人もいるでしょう。そして、おそらく大多数はそういう方たちだろうとも思います。
でも、私はそうじゃなかった。
私は、自分の心と体をあまりにも適当にあしらってしまった。
そのしっぺ返しを今、受けているような気分です。
今となって個人的に思うのは、病だけでなく「私」に何が起きているのかをもっと深刻に捉えるべきだったんじゃないかと。不眠からはじまった症状は「なんとかやり過ごせる」範疇を越えてしまいましたし、そもそもやり過ごすべきものであったり、乗り越えるべきものでもなかったのではなかったと今は思っています。結果として、もはや、何のストレスが「適応障害」の原因となったのか、よくわからなくなっているというのが現状です。
乳がんです。と言われたら、手術や放射線治療などの初期治療には集中するものかもしれません。なので、つい最近乳がんと診断された方には今はわからないことかもしれませんが、長く治療を続けるということがどういうことなのかがわかった、今だからこそ言えること。
乳がんは、大したことがない病気ではありませんし、「がん」です。
だから、もちろん治療を続けていくことは大切です。
ただ、その治療や病そのものが、自分の体や心に思ってもみなかった影響を与えることがあるのだということも、頭の隅に置いておいてほしいのです。
そして、もし、治療を続けるに従って、今までの生活や仕事とは何か違うなって思うようになったり、うまくできないことがあったり、辛いなと感じたりしたら、できるだけ早めに専門家にご相談されることをおすすめします。彼らは、この道のプロフェッショナルなのですから(あたりまえですが!)。