2013年4月19日金曜日

「標準治療」とは3:放射線治療

乳がんの標準治療では、以下の3つがセットになることが多い。

・外科手術
・放射線治療
・ホルモン療法、化学療法、分子標的療法
��上記の3つは全身療法であり、これらの内容はがん細胞増殖に関係する因子の発現や、がんの種類によって変わる)


実はちょっと間が空いてしまったのだが、放射線治療に関してまとめてみる。


乳がんに対する放射線治療の種類

乳がんに対する放射線治療には、乳房温存術後や乳房切除後に局所再発を防ぐために行うものと、再発・遠隔転移の部位(局所、骨、脳など)に対するものに大別すると2種類に分類される。

現在もっとも多く行われているのは、乳房温存術後の局所再発を防ぐための、放射線治療だろう。

この、乳房温存術後は、乳房へ放射線を照射するが、その治療は、通常リニアックという治療機械で行われる。リニアックとは、こんな感じの機械で、放射線が放出される部分は大きく左右に動く(ちなみに、私が通っている某大学病院はこの会社の機械が入っている)。

リニアックは、放射線治療用のX線や電子線を発生させる最も一般的な装置で、頭から四肢まで、全身のあらゆる領域の病変の治療が可能な汎用機である。ビームの出口にマルチリーフ・コリメーターと呼ばれる5mm厚の金属板が並んでおり(こんな感じ、Youtubeの動画)、この金属板を移動させることにより、好きな形状にX線照射野を作ることができる。

乳房温存術後に行われる放射線治療の目的と効果
乳房部分切除といった、乳房を残して腫瘍を切除する場合、将来的に同じ乳房に対する局所再発が20~30%程度に生じると言われている。部分切除後に放射線治療を行うことにより、局所再発を2~3%程度に抑えることができ、乳房をすべて切除した場合とほぼ同じ効果を得ることができるとされている。ただし、放射線はあてたところ以外には効果はないので、遠隔転移を抑制することはできず、あくまでも局所再発を抑制するためにこの治療は行われている。

照射の際は、両腕または片腕をあげた姿勢で、手術をした側の乳房全体に放射線を照射し、原則的に、月曜日から金曜日までの週5回、合計20~25回照射することが多いようだ。乳房全体を照射する場合はX線という放射線で、1回2Gy(放射線の単位で、グレイ)、合計40~50Gyを照射する。また、腫瘍のあった範囲のみに照射部位を小さくし、電子線という放射線を使い、2~3Gyをさらに3~5回ほど追加することが多い(ブースト照射)。乳房全体の照射とブーストを合わせた照射量は50~60Gyとなることが多いが、腫瘍個々のケースによって異なるので、詳しくは担当医などに聞いてみるのが良いだろう。

放射線治療にかかる時間は、治療室に入ってから出るまで、10~15分程度と短く、実際に放射線が出ている時間は1~2分程度で、痛みや熱さなどはまったくない。

放射線治療の影響
放射線治療の副作用としては、いくつかあるが、それほど深刻なものが起こることは非常に少ない。乳房に放射線を照射しても髪は抜けず、吐き気などもない。人に寄っては、少し疲れやすくなったり、白血球が減少したりすることもあるが、まったく起こらない人もいる。ただし、皮膚には、以下のような急性反応として影響が出るのが普通だ。

急性反応(皮膚の炎症)
治療中2週間ぐらいすると、乳房の放射線を照射している部分だけが、日焼けのような状態になり、赤くただれたり、水膨れができたり、かゆみや痛みなどを感じたりすることがある。その程度には個人差があるが、日焼けに弱い人ほど強く出ると言われている。かゆみや痛みが強かったり、水膨れやただれてしまった場合は、放射線科の医師から軟膏を処方してもらえる。

晩期障害
ごくまれに、「晩期障害」といって、治療後数ヶ月から数年たって、次のような症状が出る人もいる。

・放射線肺炎:100人に1人ぐらいの頻度で起こる
・上肢の浮腫や乳房の変化:100人に5人ぐらいの頻度で、上肢がむくんだり、縮んだりする
・照射部位内の肋骨骨折や放射線心膜炎:100人に1人いるかいないかの頻度で起こる
・2次発がんの増加:抗がん剤と同程度とされている

放射線治療が終了した後も、上記の晩期障害を防いだり、診断したりするために、放射線科の医師の診察が行われる。

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