2013年2月14日木曜日

針生検

選んだクリニックは、町中にある普通の個人クリニックだ。
乳腺外科専門のようで、乳がんの診断人数も非常に多いようだ。

私がそのクリニックを選んだ理由は次の2つ。

  • 臨床だけでなく、病理がしっかりしている
  • 確定診断を付けることをモットーにしている


乳がんだけでなく、細胞の悪性化であるがんの場合は、
臨床診断(いわゆる画像診断)と病理診断(組織診断)の2つの診断が
合致することで、最終的な確定診断となるようだ。

特に乳がんは、画像による診断が難しい部分もあり、誤診もそれなりに
あるという(どの病気でもそうだろうけど)。
中でも、乳がんの病理診断の方法には以下の2つを使うことが多い。
・穿刺吸引細胞診(細胞診)
・針生検(またはマンモトーム生検)

細胞診は、その名のとおり細胞を少し取って検査する。生検は、実際の「組織」を取る。
細胞診では、悪性か良性かを判断するための検査とされているので、そこでグレーな
判定が出れば、通常は針生検(マンモトーム生検)を行って、診断を確定させる。
ただし、臨床ですでに悪性の疑いが強い場合は、細胞診を飛ばして針生検を行うことになる。
針生検では、悪性か良性かはもちろん、細胞診ではわからない特殊検査(ER、PgR、HER2)なども同時に行える。これらの特殊検査の結果からわかるのは、がんの顔つきだ。

このクリニックは、その生検の診断をつけるために、日本でもトップレベルの
乳がんの病理医がいる乳がん病理診断専門施設に出していることを公言している。
それが、最終的に私がこのクリニックを選んだ決め手になった。
恐らく、他のクリニックでもそこに出しているところはあると思うけど、とにかく、病理でグレーな確定をされることだけは避けたかった。加えて、誤診の可能性も少しでも減らしたい。

ほかにもいくつか候補はあったが、何よりも最終的に決めてになったのは病理医。
もちろん、診察する先生の評判も見て。告知も隠さずズバッと言うらしい。
上の空で仕事をしたのち、夜、会社から直接クリニックに向かう。

クリニックにはほかの患者さんは誰もいなかった。
到着して受付で検診施設から送られてきた紹介状とエコー画像を渡し、問診表を書く。
すぐに診察室に呼ばれたので入ると、ズバッと物を言うとネットで評判の先生がそこに。
緊張しているので、私自身も何をどう話していいかよくわからず、とりあえず、「よろしくお願いいたします」とぺこりとお辞儀をする。
すると、送られてきたエコー画像は不要だと返され、「とりあえず、検査しましょう」と始まった。

・マンモグラフィー
・エコー

と、これまでと同じ検診を行い、エコーは先生が自身で見る。
右胸は以前と同じく、すぐに終わり、問題の左胸。
左胸の外側の上の方で何度もまた繰り返し見ている。
「ああ、これですね」。

「ちょっと組織を取って確認します」と先生が告げ、何か用意を始めている。
これからあの細胞診かと思ったら、看護婦さんに向けて「坂元で」と言っている。

心の中で「え!」と叫ぶ。
じつは、この坂元というのが、このクリニックが出している病理診断医の苗字だ。
じゃあ、これからやるのは針生検ってこと?!つ、つまり……。

「少し太い針を刺すので、麻酔をします。バネでパチンパチンと針が出て、数回組織を取ります」
と説明をして、すぐにスタート。
麻酔をしているのでまったく痛くないが、かなりの衝撃がある。

終わって、看護婦さんにガーゼを当ててもらい、抗生物質の処方があることを知らされ、
また診察室へ。
席に座ると、エコーを見せてくれる。
「ここに1cm弱ぐらいしこりがありますね。それ以外はキレイです」
「1週間後に検査結果が出ますので、その時に」
で、終わってしまった……。

受付で次回の予約を取って、そのままクリニックを後にする。
薬局に寄って、抗生物質を処方してもらい、駅に向かう。
途中で母に電話をする。

「たぶん、私、乳がんだと思う」
口にしたら、涙が出そうになった。

細胞診なしに針生検をするというのは、それだけ悪性の疑いが強いということだ。
これで、良性の結果がでたら、それは奇跡なのかもしれない。

最近の口コミがないので、よくわからないが、見た限りだと、私が訪れたクリニックでは、病理の検査をした場合に、悪性の可能性が高いということを事前に先生から告げられ、実際に検査結果が悪性だったという人が多い。
私は何も言われなかったっていうことは、非常に悪いってことなんだろうか?と、正直なところ、おびえている。
私が何も質問をしなかったから、特に説明がなかっただけなんだろうか?

がんの診断が下されることは、この時点である程度覚悟があるのだが、その状態がすごく悪いのではないかというのが怖い。

通常、私のように1cm程度のしこりで、リンパ節に転移がない場合は、乳がん初期のステージⅠとなる。
ただ、移転がある場合は、2㎝未満でも、ステージⅡa。
ⅠとⅡaの10年生存率は20%ほど違う。
ステージⅢは、さらに転移が進んだ局所進行乳がんで、10年生存率はぐっと下がる。
そして、遠隔転移がある場合は、ステージⅣで末期だ。10年生存率は3割程度。
こうなれば、手術もできず、緩和治療を行って、生存期間を延ばすことが目的となる。

このあたり、実はもっと細かい分類があって、それは乳がんの確定診断がされないとわからない。

果たして、私は、いったい……。

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