2013年3月19日火曜日

愚痴とかなんとか2:情報はどこから?

全然、愚痴じゃないんですけど、自分がせっかく乳がんになったんだし……と思って、この先も同じ仕事を続けていけるのであれば(これが一番わからないんですけどね)、「そうだ、乳がんの本でも作ろう!」と思ったんですよ。タダでは起きないというのは、こういうことを言うんでしょうねぇ。

で、これまでにさまざまな出版社から出ている、乳がん本の売上データをざざっと見て推測するに……(職業柄見られるので)
えええっ!思った以上に、売れてない……。

現在、日本では年間5~6万人が乳がんと診断されているわけです。今後も増え続けるのであれば、実際のところ、パイが増えるマーケットじゃないですか。しかも、検診を受けた中から、実際に乳がんと診断されるのは、1%以下なんですよ。だったら、検診層~精密検査層までを取り込むようなものじゃないとダメなんでしょうね。患者の1%が購入してくださっても、わずか500部にしかならないので、それでは、設計が成り立たない……。まぁ、これこそ電子書籍!っていう考え方もできたりと、段々話がずれるので、本筋へ一度戻すとしましてね。

いわゆるネット上のQAサイトを見たって、かなりの人が「乳がん」への恐怖を感じているというのも、手に取るようにわかります。これだけ予備軍がいるのに、なんで「乳がん」の本って売れてないわけ……という私も、実は本を1冊も買ってません。買おうと思って本屋さんとかで立ち読みしたんですけど、別に手元においておきたいって思った本は1冊もありませんでした(私の職業柄、1冊ぐらい買いそうなものですがw)。結局のところ、インターネットにある情報で、標準治療の大体ってわかるものなんですよ。


実際に参照されている情報は?

日本の乳腺外科医や腫瘍内科医など、乳がんに関わる医師が参照している情報というのは、以下の3つが多いらしいのですが(そして、恐らくはそうです。必ず出てきますので)、これらは大体インターネット上で情報が得られるものでもあるのです。

・日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」
・NCCN(National Comprehensive Cancer Network)の「乳がんガイドライン」
・St. Gallen International Conference on Primary Therapy of Early Breast Cancerの「コンセンサス」


最後のものだけちょっと補足。2年に1回、スイスのSt. Gallen(ザンクトガレン)で乳がん初期の治療に関する国際的な会議が行われているのですが、これは世界中で注目されている乳がんに関する会議です。最終日に世界各国から集まった乳癌治療エキスパートによる「コンセンサス会議」で、新たな治療指針が示されます。これが「ザンクトガレン コンセンサス」として、乳がん初期の治療指針の最新情報となり、参照されることが多いのです。ちなみに、2013年度の第13回のカンファレンスはつい先日終わり、今後2013年度のザンクトガレン コンセンサスも見かけるようになることでしょう。

これ以外にも、ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)やサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)などの情報もよく参照されていますが、大抵は上記3つを元にしていることが多いようです。

上記の各ガイドラインを見ると、乳がんの診断がされており、病理的な診断まで含めてわかっていらっしゃる方は、自分が選ぶべき標準治療を組み立てられると思います。ただし、標準治療上で選択肢がいくつかある場合や、そもそも標準治療ではない治療法を選ぶ場合は、主治医との相談が必要になるとは思うのですが、通常の標準治療を選ぶのではれば、実際のところ「本」を買う必要がないというのも事実です。

特に、NCCNのガイドラインには日本語化されたものもあり、それを見ることで、今後どのような診断があれば、どのような治療が行われるかというのは、ほぼわかります。逆に日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」は、学会員でないと、詳細が見られないため、わからない部分もあるのが残念なのですが、これこそ書籍を買えば恐らくわかることなんではないかと。

というわけで、唯一読んでみたいのは日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」。これは、きっとよい選択肢な気がします(笑)。

あと、あまり情報がないところで、今後絶対的に必要になるのは、再発・転移に関してですね。基本的に乳がんが再発した場合、その先に治癒はありません。QOLを維持しながら、できるだけ長くがんと共存していくしかないのです。共存ができなくなった場合は、死です。ただ、乳がんの再発・転移に関しては、かなりのケースでコントロールが効くことが多く、年単位での生存期間が望めます。患者によっては、十年単位の方もいらっしゃるわけで、初期治療に関して、現状これだけ標準治療が確立した現在は、その先の再発・転移へのケアが求められているんじゃないかと思っています。

そろそろ私も最終的な治療方針が出るので、どうなることやら。えーっとですね、もし手術ができないと私が言っている場合は、いわゆる末期なんですよね。はああ……気が重い。

あ、たぶん、乳がん関連で唯一これは売れてると思うんですが、乳がん検診に対しての啓蒙にはなったかもしれないけど、知識としてはいらない本なので。えへへ。

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