2013年6月17日月曜日

乳がんです。と言われたら3:治療を受ける場所を決める

なんとなく、がんと乳がんのことを知ったならば、次のステップとしては基本的に治療を進めることになるでしょう。知識に関しては、治療を進めるに従ってイヤでも知ることになるので、この時点では、大まかなことがわかっていれば大丈夫だと思います。

「とはいっても、病院ってどこに行けばいいの?
 がんセンターとか、がん研とか、
 もしくは、よく乳がんの話で出てくるS国際病院とか、S大学病院とか、
 そういうところがやっぱりいいの?
 というか、そもそもこれまで病院に入院したことすらないんだけど?」

私もそうでした。

治療を受けるための施設選びは本当に難しく、いまだに私は自分の選択でよかったのかどうかがわかりません。しかし、いくつかの基準から、選択できるのではないかと考えています。

確定診断を受けた場所によって異なってくるとは思うのですが、確定診断を受けた後というのは、恐らく以下のどちらかの状態にいるのではないかと思います。

A 確定診断を受けた施設でそのまま治療を行える
B 確定診断を受けた施設では治療が行えない

Aは、それなりの規模の大きさがある病院やがんセンターのような所で確定診断を受けた場合に相当すると思います。確定診断と同時に、検査や手術の予定が入るかもしれません。その場所で治療をそのまま続けられるという状態です。ただし、施設によっては、このままここで治療を続けるかなど、意向を聞かれることもあるようですし、自分から違う施設で治療を受けたいと望むことももちろん可能です。

Bは、乳腺外科の外来専門クリニックなどで確定診断を受けた場合です。これは施設によっても違うと思うのですが、施設の先生が病院の外来などで患者を診察している場合、その病院を紹介されることもあります。ただし、基本的には、患者個人の希望でその先の治療を受ける施設を選ぶことができることが多いようです。

Aの希望者と、Bの全員は、次に治療を受ける施設を選択することになります。
そして、その先の治療に関しての希望は以下の2つが選択肢になると思います。

A 標準治療を受ける
B 標準治療以外の治療を受ける(受けたい治療方法が決まっている)

今回はAに関して、どのような選択方法があるかというのを考えてみます。


標準治療を受ける場所を探す

がんの治療の基本には「標準治療」が使われることが多いというのは先にも書いているとおりです。大抵の医師からまず示される治療方針も、標準治療にのっとったものになります。標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者に行われることが推奨される治療のことです。

「標準治療を知る」にて、その内容を簡単にまとめていますが、これまでに多くの乳がん患者を対象に行われてきた臨床試験の結果をもとに検討がなされ、現時点で最善である、と専門家の間で合意が得られたものになります。標準治療は1つではなく、患者の乳がんの性質や進行度、年齢や身体状況によって異なります。そして、その標準治療をどう選択していくのかをまとめたものがガイドラインです。施設は標準治療を提供するための設備を整えて患者を受け入れ、診療する医師はガイドラインを参考に、治療方針を示します。

つまり、治療を受ける施設を選ぶにあたっては「施設」と「医師」の2つの側面から考える必要があると言えます。

施設に関して

  • がん診療連携拠点病院を調べる
  • マスコミの情報から調べる
  • 患者会などで口コミを聞く
「がん診療連携拠点病院」とは、質の高いがん医療の全国的な均てん化を図ることを目的に整備された病院のことです。その種類には、各都道府県に置く「都道府県がん診療連携拠点病院」があり、さらに都道府県をいくつかの地域に分け、その地域に置く「地域がん診療連携拠点病院」の2種類があります。例えば東京都には、2か所の都道府県がん診療連携拠点病院と、22か所の地域がん診療連携拠点病院があります。

詳しいがん診療連携拠点病院のリストはこちら(PDFファイルです)。
また、「がん情報サービス」の「病院を探す」からも検索できます(これ、超便利ですよ~)。

まず、このがん診療連携拠点病院に指定されるということは、その病院にて標準治療が提供されているということを意味します。詳しくはこちらを見ていただきたいのですが、指定要件として「集学的治療の提供体制及び標準的治療等の提供」が挙げられてます。つまり、施設を選ぶ際の基準の1つとして使えるはずです。

基本的によく名前が上がる施設は、このがん診療連携拠点病院であることがほとんどです。

ただし、このがん診療連携拠点病院はある一定の基準を満たしているものの、必ずしも「よい施設」というわけではないので、指定されていなくとも治療成績などが良い施設は存在します。そういった施設を拾うのに適しているのが、次に挙げた「マスコミの情報」です。

マスコミの情報としては、日本各地にある施設を独自調査や取材、そして任意のアンケートによりデータをまとめた、出版社などが作るムックがあります。例えば下に挙げるようなもののほかに、週刊誌などでの特集もマスコミの情報と言えるでしょう。



病院の実力 2013 総合編 (YOMIURI SPECIAL 73)
読売新聞東京本社





「乳がん」といわれたら- 乳がんの最適治療 2013~2014 完全版 (日経BPムック)
日経BP社



このようなムックでは、「がん診療連携拠点病院」はもちろん、それ以外の病院の存在そのものを知ったり、実情を知ったりするのに適しています。その他、医師が書いたり、監修したりした、病気に関する解説書籍などもあります。こういったものは、乳がんそのものに関しての理解は得られるかもしれませんが、あまり施設選びには適していないかもしれません。

マスコミの情報で1つ難しいのは、おそらく数字に関してはきちんと調査しているとは思うのですが、それ以外の記事に関する信頼性です。あまりこういうことを書くのはよくないと思いつつ、特にムックの場合は「広告」に近いものが混じっている可能性が高いのではないかと思っています。単なる推測ではあるのですが、例えば、1つの記事の中で複数の病院が紹介されている場合、広告的な内容である可能性は低いと思いますが、「治療方法の紹介」ではなく、「病院」1つを取り上げるような記事の場合は、ちょっと怪しいかなと。実際、「広告」と小さく入っている、まるで通常の記事のような体裁のものもありますし……。まあ、あまり気にすることではないのかもしれませんが、私自身が市販の商業出版物をあまり参考にしない理由はここにあります。


さらに最後の患者会ですが、日本には乳がんに関する患者会が複数あります。私は特にどの患者会にも属していないので、詳しいことは書けないのですが、すでに病院で治療を受けている方の体験談は、施設を選ぶ際にもきっと役立つはずです。特に、施設を選ぶ際にいくつか候補があり、どの施設も同じような水準の場合、非常に悩むかもしれません。そんな場合に、地域に根差した患者会にて、候補とした施設で治療を受けられている方がいらっしゃれば、詳しい話を患者目線で聞くことができるでしょう。それ以外にも、患者同士でしかわからない不安などを相談する先としても、大切な場所になるのだと思います。


医師に関して

  • 認定医・専門医・指導医で選ぶ
  • マスコミの情報から調べる
  • 患者会などで口コミを聞く

医師に関しては、日本乳癌学会の専門医であることを条件にしてよいのではないかと思います。日本乳癌学会は、医師だけでなく、関連施設の認定なども行っているので、これも合わせて確認してみるとよいでしょう。専門医に関しては、がん診察施設連携病院に指定される際の要件になっているようなので、がん診察連携拠点病院であれば、必ず専門医がいることでしょう。ただし、専門医であっても、人間性を認定しているわけじゃないのが、本当に困るんですよね。これはもう、会って話してみて、自分と合うか合わないか、というところに終始してしまうのではないかと思います。また、乳がんは術後10年をかけて予後を見ていくことになるので、できれば、現在は40代ぐらいの先生だと予後も最後まで見てもらえて安心など、選択肢になるのかもしれません。

それ以外に関しては、「施設に関して」と同じ内容なので、施設を医師に読み替えればよいのではないかと思います。そして、日本乳癌学会の専門医でなくても、乳腺専門の医師として優秀な方もいらっしゃるとは思います(ただし、施設に比べるとさらに少ないような気がします……)。また、患者会の方から聞く医師の人柄は、一番参考になりそうな気がするので、施設だけでなく、医師の評判なども口コミで確認してみるというのもよさそうです。ただし、人対人の場合、ある人が思った印象を自分も同じように思うとは限らないというのが難しいところですが……。


というわけで、治療を受ける場所を選ぶ際の基準として考えられるのは、
  • がん診療連携拠点病院から「施設」を選ぶ
  • 日本乳癌学会の専門医から「医師」を選ぶ
  • その他マスコミの情報や患者会での口コミなども参考にする
という、なんとなくまっとうな結論になってしまいましたね。しかし、このエントリーを書こうと思ってちらっと見てびっくりしたのが、がん診療連携拠点病院が院内データとして毎年登録を行っている「がん診療連携拠点病院院内がん登録全国集計」のすごさです。

基本的にがん診療連携拠点病院は、日本における5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)に関する、診断時の病期分類や行った治療方法などを毎年登録しているようなのですが、それを施設ごとに集計したものが公開されているのです。ただし、このデータには術式(温存か全摘か、再建したのか)などが集計されていないため、そのあたりは別途情報に当たらないといけないと思うのですが、この院内がん登録はかなり細かいデータだということを知り、非常に驚きました。どんな病期の人がどれだけ、どの施設で診察や治療を受けているのかというのは、施設を選択するときの参考にできますし、このデータは必見かもしれません。

また、各施設における、ステージごとの5年、10年生存率などに関しては、各施設でほぼ把握しているはずです。なので、公に公表はしていなくても、主治医やその施設の相談支援センターなどで聞けば、大まかな数字は教えてくれるものだと思います。というか、自分が実際に治療を受ける段階になっても、そういう数字を出せない、教えてくれない施設は、ちょっと不安が残るかもしれません。

どうしても標準治療なのか?

基本的に標準治療を選ばれる方が一番多いですし、通常、がん診療連携拠点病院の医師であれば、ファーストチョイスとして示す治療方針はガイドラインなどを参考にした、標準治療に則ったものになるでしょう。ただし、それがすべてではないということも、知っておいてよいと思うのです。つまり、「B 標準治療以外の治療を受ける(受けたい治療方法が決まっている)」を選ぶ場合ですね。

例えば、自分の乳房にどうしても傷を付けたくないのなら、ここでも紹介したとおり、それ相応の治療法はあります。ただし、その治療は標準治療ではないことも多く、受けられる場所も限られますし、臨床試験の段階にあったり、保険適用していない場合は自由診療になります。また、その治療方法にはまだ明確なエビデンスは存在していないに等しく、治療方法のメリット/デメリットも知っておく必要があります。そして、治療費用に関しても高額になる可能性が高いということなども理解したうえで選択するということになるでしょう。

また、ちょっと乱暴な言い方ですが、治療という選択肢があるのなら、無治療という選択肢も私は存在してよいと思っていて、それを尊重してくれる先生というのも必要じゃないかと思っています。なかなかこれは探すのが大変そうだとも思いますが……。

そして、何よりも大切なのは、
自分はどの施設で、どんな治療を、どの先生から受けるのかを
自分自身で決めるということです。

2013年6月12日水曜日

乳がんです。と言われたら2:情報を集める



「私はどうやら本当に乳がんみたい。
 乳がんにはいろいろな治療方法があると言われたけれど、
 これから、いったい、どうすればいいのだろう……?
 っていうか、私、死ぬの?!」

確定診断によって告知を受けた直後は、かなり混乱して、何から手を付けていいのかわからないかもしれません。毎晩、突然恐怖に襲われ、眠れない日々を送るかもしれません。

私もそうでした。

診断された際に説明があったかもしれませんが、乳がんというのは、昨日今日できるものではなく、1つのがん細胞から1センチの大きさのしこりになるまでに、7~8年かかると言われています(もちろん、例外もあるようですが)。

これは細胞分裂の速度から言われていることなのですが、乳がんの進行というのは、実際はかなりゆっくりです。診断とともに、検査や手術などの予定が入るかもしれませんが、これらすべてが診断当日には行われないものなので、考える時間はまだあるはずです。まずは、乳がんというがんに関する知識を得たり、今後のことを考えてみたりしましょう。

  • 乳がんに関する情報を集める
  • 治療をどこで受けるかを決める
  • 経済状況を確認する

今回はどうやって情報を集めればいいのか、私が個人的に「情報」として参考にしているサイトを2つ紹介します。

乳がんに関する情報を集める

「これから、いったい、私はどうすればいい?」と思うのは、当然のことなんじゃないかと思いますし、「落ち着いて」と言われても、そんな簡単に落ち着けるものではないはずです。そして、「乳がん」という単語がくるくると頭の中で回っているかもしれませんが、この際は「乳がん」という狭い範囲(とは言っても、乳がんだけにしぼっても、範囲はかなり広いんですけど)だけから物事を見るのではなく、まずは「がん」という病気そのものを取り巻く情報を知り、さらに「乳がん」を考えるというアプローチをとってみると、より理解が深まるような気がします。

がん情報サービス
個人的な観点ですが、日本で一番「がん」に関する情報が集まっているかつ、がんと診断されたら最初に勧めたいと思うのは、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」です。

がん情報サービスには、がんと診断された方が必要とする情報が多角的にそろっています。それぞれの内容もかなりわかりやすいですし、何よりすべて無料で閲覧できるというのは利点です。さらに、冊子として配布されているPDFデータもダウンロードできるので、必要に応じて印刷して読むというのもよいと思います。

また、「がんと付き合う」のカテゴリーは、読み物としても充実しており、がんになった患者だけでなく、その家族や周囲の方にも有用だと思える内容がそろっています。がんになっても普通に働きながら治療を続けるというのは、思っていた以上に大変なことだと身を以て実感しています。「がんと共に働き、生きる」ことは、病気にはなってしまったものの、この年まで適当に生きてきた私にとって、これまでの人生とこの先の人生を深く見つめなおす機会でもあると思っています。

また、ちょっとマニアックにはなりますが、医療関係者向けにに公開しているグラフや数値などの統計データも見てみると結構興味深いです。このあたりは、普通の人にはあまり関係ないですね……。

乳がんに関する情報ももちろんありますので、まずは、ここから読んでみるのもいいかもしれません。


患者さんのための乳がん診療ガイドライン
そして、「乳がん」そのものに関しては、日本乳癌学会がまとめている「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」が最適だと思っています。書籍版もありますが、Webサイトでもほぼ同じものが閲覧できるようになっています。こちらは、2012年に発行されたものなので、比較的内容も新しく、乳がんになったら誰もが思うであろう疑問や不安などがQ&A形式にてまとめられており、非常に妥当な答えが書いてあります。文字だけでは理解しにくい箇所には、図版もふんだんに入っているので、理解しやすい体裁ではないでしょうか。

また、このガイドラインは、乳がんという病気の理解のために有用ですが、同時にこの先に行われる治療のおおまかな道しるべにもなるものです。さらに、主治医との治療を相談する際の根拠とするという使い方もできるでしょう。たとえば、どこかで聞きかじった話を主治医にしても、信ぴょう性がない話を医療従事者ではない患者がしているということで、あまり聞く耳を持ってくれないかもしれません。しかし、「『患者さんのための乳がんガイドライン』では、このような説明があったのですが、他のサイトでこの部分がこうだという話がありました。いったい、どちらが正しいのでしょうか?」といった感じに、ガイドラインを介して、聞きにくいことを聞きやすくするために使うということも考えられます。

個人的にこのガイドラインは、乳がんと診断されたときから今に至るまで、その節目節目にWebサイトにアクセスして、読んでいるような気がする、大切な1冊です。


informationとjournal、そしてidea

個人のblogを書いている私が、非常に矛盾した話をして申し訳ないのですが、個人的な戒めもかねてあえて書くと、個人のblogに書いてあることは、informationすなわち、情報ではないと思っています。私のblogも同じです。このblogに書いてあることは、情報ではなく、単なる記録とまとめで、だれかのためではなく、すべては自己満足のためです(ただし、私を知っている人に向けては書いているつもりです。その理由は後述)。

情報とは、辞書を引くと「ある特定の目的について、適切な判断を下したり、行動の意思決定をするために役立つ資料や知識」と意味が記されています。今回紹介した2つのサイトは、多くの事実や医学的なエビデンスをもとにまとめられており、その妥当性も多数の専門家による客観的な検討によって裏付けられるなど、長い過程を経て公開されているものになるので、上記の「情報」の意味を満たしていると考えられるはずです。しかし、個人のblogというのは、そこからはちょっとずれているのではないかと思うのです。あくまでも個人の視点や体験に基づいた内容というのは、どれだけ「情報」の体裁であったとしても、それは主観性が強く、属人的で、客観性には欠けるのかなと。


なので、いろいろと考えてみたのですが、個人のblogというのは、上記の客観性などの観点から、informationというよりも、journal(日記)に相当するものなのではないかと。また、そこに書いてあったことが、どなたかの行動のきかっかけになったというのなら、たまたまその方にとって「idea」がそこにあったということではないかと思うのです。

なんだか否定的な話を書いてしまいましたが、同じ病気の方が書いているblogの日記や記録の内容を読むと、この先の治療が不安になることも多いと思います。とはいうものの、治療に関してblogを書くということは、書くことがある(順調に進んでいない)からという方もいて、そういった内容の文章に自分を重ね合わせて読むことで不安になってしまう……というあまりよくない循環が生まれることがあります(私もそうでした)。

そして、その背後には、blogに書くことがない(治療が順調に進んでいる)、乳がん患者さんがたくさんいるとも思うのです。たぶん、順調に治療が進んでいる乳がん患者さんというのは、表に出てきにくいものでもあるでしょう。もちろん、blogでは病気のことだけでなく、明るい日常を記されている患者さんもたくさんいらっしゃいますので、個人blogが不安をあおるだけのものではないことも事実です。ただ、この病気は、自分自身で、絶えず襲ってくる不安とどう向き合い、どうマネジメントするかということも実は重要なんじゃないかと最近は思うようになりました。そして、ちょっと視点を変えるだけで、不安を減らすことはできるのではないでしょうか。

情報は、自分にとって本当に有用であり、必要なものを選んでこそ、価値が生まれます。

そして、何よりも大切なのは、
その情報をどう選び、使うのかを決めるのは、あなただということです。

じゃあ、なんでblogを書いてるのよ、というのはMore以降で。単なる、言い訳ですが(笑)。

2013年5月15日水曜日

乳がんです。と言われたら1:とりあえず質問してみる

「残念ながら、乳がんです」

ある程度覚悟していたかもしれないし、そんなわけないしと思っていたかもしれません。
いずれにせよ、15人に1人の「1人側」になってしまうこと、それが告知です。
「1人側」にぜひ入りたかった人というのは、おそらくいないことでしょう。
もちろん、「14人側」に入りたかったですよね。
でも、残念ながら「1人側」に入ってしまったということです。

告知をどのように受け止めればいいのか、それは私にもわかりません。
そもそも、正しい告知の受け止め方というのはあるのでしょうか?

私のように1人で告知を聞く人もいれば、家族やパートナー、友人と一緒に告知を聞く人もいるだろうし、先生がどのように伝えるかで、捉え方や感じ方も変わるでしょう。

頭の中が真っ白になってしまうかもしれないし、涙がこぼれてしまうかもしれません。
今までにないくらいのショックを受けたあげくに、「死」という恐怖が襲ってくるかもしれません。

私も、そうでした。

しかし、私が知っている限り、意外と冷静な人もいます。
もし、告知を受けても、思考回路が大丈夫そうな感じだったら、次の2つのことを担当医に聞いてみましょう。ただし、そんな簡単に冷静になれるものではないのも事実なので、この先の検査や診察のときに、日を改めて質問することもできるでしょう。

  • 私は本当に乳がんなのですか?
  • どのような治療が行われるのですか?

私は本当に乳がんなのですか?


実は乳がんには、それなりの割合で誤診があるといわれています。
なので、担当医に乳がんという確定診断にいたった経緯をもう一度聞いてみましょう。

マンモグラフィーやエコーの画像による診断はもちろん、必ず細胞や組織を取って病理診断もしていると思いますので、確定診断にいたる経緯があるはずです。その経緯を教えてもらい、疑問に思うところがあるのなら質問してみましょう。

担当医の自分の乳がんに対する診断がどれだけ確実なのかを知ることで、自分はがんなのだと確信を持てます。すると、腹がすわり、落ち着いてくるかもしれません。もし、ここで曖昧なことを言われたら、その診断に疑問を持ったほうがいいのかもしれません。

どのような治療が行われるのですか?


やはり自分は乳がんだという確信を持てたなら、次は今後の治療がどうなるのかを聞いてみましょう。もちろん、この時点では詳しい検査はしていないので、担当医も正確なことは言えないはずです。ただし、おおまかな治療方針というのは、この時点でもある程度は話してくれるのではないかと思います。

沢山の選択肢が提示されるかもしれません。
治療の内容も、初めて聞くことでよくわからないかもしれません。
どれも大変そうで、また恐怖がぶり返してくるかもしれません。

とはいえ、実はここでいろいろな治療方針が提示されるということは、
そして、今後その治療を進められるということは、自分の乳がんに対して

  • 治療方法が存在しているということ
  • その治療を試せる「体」と、それを支える「体力」があるということ
  • 治療費を支払える経済力があるということ

なのです。

発見された時点でとても状態が悪ければ、そもそも治療ができないでしょうし、
病気が進むことで、治療方法がなくなってしまうかもしれないでしょう。

治療に耐えられる体と、その体を支える体力がなくなったり、
経済的に困難になってしまったりすれば、治療は続けられなくなってしまうでしょう。

病気になってしまっても、これから治療が始められるというのは、
この病気に対する手だてがある状態だということ。
つまり、患者としては、ちょっとだけ幸せな状態だと思えるんじゃないかと。

(もちろん、病気にならないのが一番いいんですけどね)

そして、何よりも大切なのは
乳がんになったからといって、今すぐには死なないということです。

2013年5月13日月曜日

乳がんかな?と思ったら



たぶん、乳がんの疑いがあったり、実際に診断されて、色々と検索したらこのBlogにたどり着いた方もいるかと思います。患者の方のBlogは沢山あって、あまり良くない内容が書いてあって、それを読むたびに不安になるのではないでしょうか?

私もそうでした。

乳がんになる確率


生涯、女性が乳がんになる確率は、現在の日本の場合、約15人に1人の割合と言われています。日本よりも患者が多い欧米では、約8人に1人の割合と言われています。日本の割合は年々増えており、最終的には欧米と同じぐらいになるのではないかと言われています。

とはいえ、生涯、乳がんにならない女性の方が圧倒的に多いのです。
まず、これを大前提として知ってほしいと思います。

一方、乳がんのリスクファクターで確実なのは女性であることです。
つまり、このBlogを読んでいる方の性別が女性なら、男性よりも乳がんになるリスクは高いと言えます。

この2つのことを考えると、女性であれば誰でも乳がんになる可能性があるものの、生涯乳がんにならない女性の方が多いのが事実です。

そして実際に乳がんと診断される割合ですが、日本対がん協会によると、以下のように説明されています。


精密検査とは
 視触診併用のマンモグラフィによる乳がん検診を1000人が受けると仮定します。さらに、精密検査を受けた50人中、乳がんと診断されるのはおおよそ1~2人です。受診者全体から見ると0.1%か0.2%です。
そのうち50人が「精密検査が必要」とされます。全体の5%です。
日本対がん協会 乳がんQ&Aより

検診で精密検査になってしまったり、しこりを見つけてしまったら?

まだ、この時点では乳がんだと決定したわけではありません。
上記にも書いたとおり、検診で最終的に乳がんと診断されるのは、1000人に1〜2人です。
また、自分の乳房にしこりを発見し、「乳がんかも?」と思う方もいるでしょう。
そういった場合、まずは、医療機関で精密検査や乳腺疾患の診療をさっさと受けましょう。
精密検査や乳腺疾患の診療を受ける際ですが、以下の2つに気をつけて医療機関を選ぶのがいいと思います。

  • 精密検査を受ける医療機関の医師が「(乳腺)外科医」であること
  • 確実な診断を心がけていること

まず、乳がんの治療は基本的には外科医が担当します。その中でも「乳腺」を専門にしている医師を探して精密検査を受けるのがよいと思います。都市部なら、選択の余地は多々ありますが、地方などではなかなか探しにくいかもしれません。大変だとは思いますが、外科で診療を行っており、さらに乳腺を専門にしている医師を探し当ててください。どこで精密検査を受けるか、どこで乳腺疾患の診療を受けるかで、その後が大きく変わります。

よくある話で、乳がんの精密検査は婦人科にかかるのでは?と思う方もいると思いますが、婦人科は子宮や卵巣など、女性生殖器に関する専門です。婦人科で乳がん検診をしている場合もありますが、乳がんは基本的に専門外になるので、精密検査や気になる症状があるのであれば、なおさら乳腺外科医の元を訪れるようにしましょう。

また、確実な診断を心がけているとは、安易に経過観察にせずに、確定診断をすることを心がけている医療機関を選ぶということです。乳がんは、がん細胞によって腫瘍が作られる病気です。なので、腫瘍の画像診断と、その腫瘍の細胞または組織診断の2つが合致することで、がんの確定診断となります。画像のみで、乳がんの確定診断は下せないはずです。

乳腺外科の乳腺専門医であれば、マンモグラフィーやエコーの画像によってその95%程度は良性または悪性の判断ができると言われています。ただし、その時点で良性と判断できない場合は、必ず細胞や組織を取って検査することになります。通常はこれらの検査の結果を持って、最終的な診断となります。

ここまで検査をしてもグレーな判断をされ、経過観察となっている例をよく見かけます。さらに検査を行うこともあります。その場合はなぜ経過観察になるのか、なぜ検査が追加されるのかを納得できるまで聞いた方がいいでしょう。もちろん理由があって経過観察になったり、検査が追加されることもあるでしょう。しかし、きちんとした説明が得られずに経過観察になったり、検査が追加されるのであれば、それは患者にとって不利益ですし、不安なまま日常を過ごさなくてはならなくなるのは精神衛生上もよろしくないことです。

検査結果に対する診断が信頼できないのであれば、医療機関を変える必要があるでしょう。ただし、エックス線を使ったマンモグラフィーや針を使った検査は、短期間に何度も行うことも、患者にとっては不利益なので、やはり、最初の医療機関の選択は慎重に行うべきです。

検査結果を待つ間は不安に押しつぶされそうになるかもしれません。
私もそうでした。

仕事や家事が手につかないかもしれません。
私もそうでした。

バレない程度に手を抜くことができるなら、思い切って手を抜いてしまいましょう。
そんなことは大したことないので、あとで、きっとどうにでもなります。

細胞の検査は、その日のうちに結果が出るかもしれません。
組織を取る生検でも、長くても2週間程度で結果が出るでしょう。

そして、何より大切なのは、
この時点ではまだ乳がんと診断されたわけではないということです。

2013年4月29日月曜日

愚痴とかなんとか6:術後のあれこれ

乳がんの手術後、最近ちょっと気になり始めたのが、実際、私はどれだけの重さの脂肪と腫瘍を取り出したのかということです。私の家族は、術後の説明の際、実際に取り出した組織を見ているのですが、私は見ていません。母に話を聞いたところ、見せられた組織が思ったよりも大きかったようで、私の今の乳房の状態を見せたら、「あんなに取ったのに、ほとんど変わってないわね(絶句)」だそうなんですよ。いや、こっちもそんなに組織を取ったとは思ってなかったので、話を聞いてびっくりでしたが。

まあ、ボンボンの腕がよかったから、それほど乳房の形が変わらなかったのかもしれませんが(もしかしてこれが腕利きってことか!?)、いずれにせよ、それなりの量は取り出しているような気がします。なので、その重さ分を乳房あたりに持ってくることで、体のバランスが崩れることはなくなるのかと。次回の診察の際に聞いてみようと思っているんですが、実際、取り出した組織って重さを計ってるもんなんですかね?

あと、術後に「普通の下着を着けていいですよ」と言われたんですが、いくら変化がそれほどなくても、形がまったく変わってないわけではないし、傷もあるので、大きさが左右対称であり、傷がないことを前提に作られている、いわゆるワイヤー入りのブラジャーは今のところしていません。今後、放射線治療が始まれば、脱ぎやすく着やすいという観点の下着を着ける必要もありますし……。たぶん、下着選びというのも、ちょっとしたトピックになりやすいんじゃないかと思ってます。

大体、傷に縫い目など何か当たると痛いので、結局はカップ付きタンクトップ的なもので誤魔化しています。いろいろなメーカーから出ているので、何枚か買って試してみているのですが、今のところは無印良品のパッドを入れる部分がメッシュになっているものが私には一番良い感じです。ユニクロのはカップの淵が傷に当たってちょっと痛いんですよ……ホールド感はユニクロの方がいいんですが……。と、男性にはあまりよくわからない話で今日は終わり。「どうでもいいこと」なんで、こんなところでしょうかー。今日は本当にどうでもいい話でしたね。

それと、やっぱり術後しばらく経ったら、手術した乳房がしぼんできたような気がする……よく考えてみると、移動した脂肪って、実はそれほど定着しないんじゃないかと思うんですよ。脂肪を使った豊胸術って、大体そんなもんみたいなので、同じことなのかなと(あ、豊胸術はしたことないですよ!あくまで一般論ですよ!)。もともとの乳房はそれほど大きくないので、なるべく現状維持でお願いしたいところです。この後、放射線治療を行うと、さらにしぼむのかしら〜(ため息)。
傷も線一本とは言え、思ったよりも長いし(8センチぐらいある・涙)、やっぱりしばらく経つと、色々と愚痴が出てきますね。術前に術後はどうなるかっていう話を、もう少しきちんとしなかったことがちょっと悔やまれます。なにが不安なのかがわかっていたのに、それを解消するための行動ができなかったことも。まあ、この辺りは、「切らない治療」というのが主流になれば、多少は解消しやすくなるんでしょうね。
私は、傷が残ることや、乳房が変形したり、術後にしぼんだりすることがイヤだったんじゃないんです。そうではなくて、術後にどうなるのかという現実的なことを、可能性の話でもいいから知りたかった。でも、何度、説明を聞いても私は理解できず、最後まで話の落としどころが見つかりませんでした。何度も説明してもらってるのに理解できない私って、本当はバカなんじゃないかとまで思ったぐらいです。恐らく、やってみないとわからないところもあるのだろうけど、実際はボンボンの術後の発言にあった「どう説明していいかわからなかった」によって、意思疎通がとれてなかったことが判明したのですが、これで片付けてしまってよかったことなのかなと、やっぱり未だに思っています。
わかってる、私はしつこいけどな!

2013年4月24日水曜日

読むと役に立つかもしれない本

愚痴とかなんとかシリーズ(シリーズだったのか?)は、私が乳がんに対して漠然と考えてることを書いているんですが、今日はちょっと趣を変えて。

医療統計はじめました

いろいろと治療法に関して検索などをしていると海外の論文などをちら見することも増えますが、文系の私が一番読んでいて苦労するのは、英語ではなく、実は統計です……。

統計学が最強の学問である

西内 啓 / ダイヤモンド社


最近のベストセラー本で上記の『統計学が最強の学問である』というのがありますが、巷では統計学が流行っており(統計学が流行る背景ももちろんあるんですけど)、それに乗りつつちょっと学び始めてみました。この本にもあるのですが、そもそも統計学というのは、公衆衛生学とか疫学が生みの親です。

だったら、医療に関する統計について知った方がいいかなと思い、その入門書として手に取ったものがとてもわかりやすいものでした。これから乳がんに関する論文を読むために、統計学を学びたいなーと思った方は、ちょっと目を通してみてはいかがでしょうか? 少なくとも、他の方が書いている闘病Blogを読んで一喜一憂するよりも、きちんとした情報を得られるようになった方が気が楽になることもあるのではないかと思うのです。

宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー (114))

佐藤 俊哉 / 岩波書店


この本以外にも、統計学について10冊ほど読んでいるところです。実はこれは最近の仕事でもあり(治療費を稼ぐために! もう仕事に戻ってます・笑)、ある程度読み終わったら、まとめの記事にする予定です。記事は公の場に出すことになりそうなので、またそれはその時に。私の統計学の知識もきっと役に立つぐらいになっていることを祈って。

遺伝子医療の事実と希望から、身体の将来を予測する
また、何度かOncotype DXの話を書いていますが、実際にこのような遺伝子を使ったパーソナル医療の全体像をつかむのに、最適なのではないかと思うのが次の本です。遺伝子医療の事実と希望が非常に読みやすい形でまとまっている良書です。

遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える

フランシス・S・コリンズ / 日本放送出版協会



ちょっと前に国際関係や外交政策に関するジャーナリストのトーマス・フリードマンの『フラット化する世界』という本がヒットしたことを覚えているでしょうか?IT(情報テクノロジー)の発達により、階層や地域の壁が取り払われる(ボーダレス化する)といったことを説いた内容でした。実際に医療もそのフラット化する世界の一部に取り込まれており、現在、遺伝子医療にはどんな人でもアクセスが可能になりつつあります。しかし、その一方で、フラット化された世界においては、人それぞれに情報が与えられる機会が均等になるわけではありません。がんは情報戦であるとよく言われますが、フラット化された世界では、人は主体的かつ能動的に情報を入手し、それを活用することで、初めて恩恵が受けられるのです。そして、医者との関係をフラット化するには、患者として積極的に治療に関わる必要があるのではないかと思っています。

ちなみに、この本の中にも、遺伝子発現解析により抗がん剤を利用せずに済んだ乳がん女性の話が出てきます。アメリカの話のようなので、恐らく、ここで言う遺伝子発現解析とはOncotype DXのことでしょう。その他、乳がん関連では、遺伝子検査をして(Dx)処方する(Rx)薬品として、HER2陽性乳がんのための、分子標的薬のトラスツズマブが取り上げられており、また、抗エストロゲン薬のタモキシフェンは、体内でCYP2D6によって酵素が作られない患者には薬効がないため、おそらくはこれに対するDxRxが近い将来行われるようになるだろうといった話が記されていました。最後の話は、最近よく聞きますね。

なお、この本の著者は、アメリカでヒトゲノムプロジェクトを率いていたトップサイエンティストなのですが、一般向けに書き下ろしているというのもあり、どの話も文系の私でも非常にわかりやすく、かつ知的好奇心をそそる内容です。「人は誰もがたくさん遺伝子的欠陥を抱えて生まれていることを認識しておこう。完全な人間など一人もいないのだ」という一節が特に心に残ったのですが、「完全な人間など一人もいない」、これこそが生命の本質を表しているのではないでしょうか。そして、遺伝子的欠陥はその人ごとに違うため、ある人に合う治療がある人には合わないということがあるということ。画一的な医療を受動的に受けるのではなく、まずは人体そのものに対する考え方を私たち個人個人が変えて行かなくてはならないということを強く感じました。

どうしても病気になると、その病気のことばかりについて狭い範囲で調べてしまうと思いますし、それは大切なことです。しかし、一歩下がって、自分が受けている(もしくは受けようかと思っている)治療をとりまく全貌というのを広い視野から検討することで、自分にとってよりよい選択肢を選ぶことができるようになるのかもしれません。

話はちょっと戻りますが、海外の論文を読む際は、もちろん英語も最初は単語がわからずに苦労してましたが、読んでいるうちに頻出単語は覚えてくるので、最近はExtractやAbstractぐらいであれば、それほど苦労せずに読めるものも増えてきました。その中で最近読んで知ったのが、the Ki-67 labeling indexの「Ki」と「67」の意味。治療そのものとはまったく関係ないのですが、ちょっと面白かったので。

The Ki-67 antigen was originally identified by a German group in the early 1980s, by use of a mouse mAb against a nuclear antigen from a Hodgkin's lymphoma-derived cell line. This non-histone protein was named after the researchers' location, Ki for Kiel University, Germany, with the 67 label referring to the clone number on the 96-well plate.

��訳)Ki-67抗原はもともとホジキンリンパ腫由来細胞株から核抗原に対するマウスモノクローナル抗体を使用することにより、1980年代初頭にドイツのグループによって同定された。この非ヒストンタンパク質がKiと名付けられたのは、研究者がいた場所である、ドイツのキール(Kiel)大学にちなんでおり、67ラベルは、96穴プレートのクローン番号を参照している。

ということで、Kiはキール大学から、67はプレートのクローン番号だった、というオチです。KiってHER2みたいな長々とした名前(human EGFR-related 2/nue)の頭文字みたいなもんなんじゃないか?と思っていた私にとっては、へーへーへーと、どうでもいいうんちくがまた増えてしまった……。

ちなみに、96穴プレートというのは、こんなやつです。こちらも、へーへーへーって感じですな。クローン番号というのは、どうやらこのプレートを使う際には、必ず番号が振られるようなのですが(クローンを扱っているからクローン番号なんだと思います)、それが67だったということみたいです(この辺はあやふやですみません……)。

なんてどうでもいいうんちくを、どんなに調べたところで、私の乳がんが再発しないってわけじゃないのがまた腹立たしいことです(笑)。あと、本に関してですが、基本的に私個人は、闘病を扱う書籍は有名人が生還するか、もしくは一般人なら死なないと売れないというのが(ビジネスライクに)、また腹立たしいことなので、読む気もしないし、このBlog上で扱う気もしません。自分が死に直面すれば、話は変わるかもしれませんが。

2013年4月22日月曜日

「標準治療」とは4:全身療法について

乳がんの標準治療では、以下の3つがセットになることが多い。

・外科手術
・放射線治療
・ホルモン療法、化学療法、分子標的療法
��上記の3つは全身療法であり、これらの内容はがん細胞増殖に関係する因子の発現や、がんの種類によって変わる)


今回からは現在の乳がん治療において、主軸になりつつある、全身療法に関してまとめてみる。

・乳がんのサブタイプが決まる要因
ひと口に乳がんといっても、タイプは1つではない。次の分類やグレードなどを使って、そのがんの人となり的なものをさらに細かくサブタイプ化し、そのサブタイプに合わせた治療がおこなわれる。

・組織型による分類
・免疫染色による分類
・組織学的異型度によるグレード
・その他の予後解析法
なお、上記以外にも、リンパ節への転移や腫瘍径など、手術時に摘出した腫瘍の病理診断も加味される。

・組織型による分類
組織型による分類とは、いわゆる乳がんの組織構造とがん細胞の特徴によって分類したもの。いわゆる、非浸潤、浸潤、といったところから、乳管癌、小葉癌などがあり、これは日本乳癌学会の取り扱い規約にて、以下の内容がまとめられている。なんか頑張って表を作ってみたけど、あまり最近はこの分類には意味がないかも。最初のフィルターの役割って感じで(笑)。

以下は乳がんの組織学的分類(日本乳癌学会)より


・免疫染色による分類
免疫染色による分類とは、病理組織の標本を染め分けることで可視化される、がん細胞に存在する特殊な受容体(レセプター)を発見し、その発現度合により、タイプを振り分けることである。各レセプターは外部から何かしらの刺激を得ることによってがん細胞が活性化するため、これら受容体の存在を調べることで、がん細胞がどんな「餌」によって、増殖しているのかがわかる。

特殊型乳がんの一部には適用されないが、通常の乳がんの場合は以下の2つのレセプターの発現を評価し、その発現度がサブタイプ分類に使われる。発現していれば陽性、発現していなければ陰性であり、基本的に陽性=そのレセプターに対する治療が効きやすいと思っていただきたい。
・ホルモン受容体
・HER2タンパク

ホルモン受容体(レセプター)には、女性ホルモンである”エストロゲン”もしくは”プロゲステロン”の2つがあり、この受容体があるがん細胞は、上記のホルモンの刺激によって増殖する。何度か病理診断などに関して略称で書いてきたが、「ER」=エストロゲンレセプター、「PgR」=プロゲステロンレセプターのことだ。これらががん細胞の核に存在しているのならば、そのレセプターに対して女性ホルモンという「餌を絶つ」、いわゆる兵糧攻めを行うのが「ホルモン療法」である。ちなみに、ホルモンレセプター陽性乳がんは、乳がんの中でもっとも多く約70%を占め、ホルモン療法自体は、乳がんの全身療法として古くから存在する治療法である。

HER2(human EGFR-related 2/neu)タンパクは、がん細胞の膜(細胞表面に存在する糖タンパク)に存在する受容体型キナーゼである。このHER2を過剰発現する乳がん(HER2陽性乳がん)に対しては、HER2を標的にした分子標的治療薬を用いた分子標的療法が行われる。乳がん全体の約25%を占めるといわれるHER2陽性乳がんは、がん細胞の増殖速度が非常に早く、数年前までは、もっとも予後が悪いものとされてきた。しかし、このHER2タンパクのみを狙い撃つための分子標的治療薬(トラスツズマブ、商品名:ハーセプチン)が登場したことにより、予後が大きく改善された。

トラスツズマブは日本において、2001年に転移進行性乳がん(いわゆる再発や遠隔転移)に対しての治療薬として承認されたのち、2008年にHER2過剰発現乳がんの全身療法への追加適用が承認されている。また、現在、HER2陽性乳がんに対する分子標的治療薬には、トラスツズマブ以外にもいくつか存在している。個人的に思うに、ここ数年でもっとも生存率が上がったサブタイプじゃないかと。

・組織学的異型度によるグレード
乳がんの細胞・組織学的な特徴のことを悪性度(グレード)と呼び、この数字はがんの顔つきとされている。グレードは組織学的異型度ともいわれ、乳がんの予後を推測するためのものである。評価には腺管形成の程度、核の多形性、核分裂数の3つの因子を3段階にスコア化し、次にこれらの数値を合計して、3、4、5点=グレード1となり、6、7点=グレード2となり、8、9点=グレード3と判定しているようだ。生存率はグレード3、2、1の順に不良であることが明らかとされれいる。

・その他の予後解析法
先にも書いたとおり、ホルモンレセプター陽性乳がんは、全体の70%程度を占めることから、さらなるサブタイプ分類が必要になっている。たとえば、ホルモンレセプター陽性乳がんの中にも、抗がん剤を上乗せした方が生存率の改善が改善されるサブタイプがあるとされており、そのサブタイプを見極めるために、上記以外の予後解析法が使われるようになっている。

Ki-67(the Ki-67 labeling index)
細胞の核に局在する、がん細胞が分裂しようとしている時に出てくるタンパク質のこと。このタンパク質は細胞の増殖の能力を示す物質と考えられており、悪性度の判定に用いられている。Ki-67の抗体で免疫染色を行うとがん細胞の核が染色され、その500個~1000個のがん細胞における、Ki-67抗体の標識率(陽性率)を表す(ちなみに、このカウント方法が色々あるようで、実はこのki-67は信憑性がどこまであるのかが謎)。ホルモンレセプター陽性の乳がんのみの治療指針とされているもので(なぜなら、予後はホルモンレセプター陽性の方がホルモンレセプター陰性よりも良いので、この数値自体がホルモンレセプター陰性乳がんには関係なくなる)、標識率が14%以上であると、予後が不良であることが報告されている。

多重遺伝子診断
これは最近使われるようになったものなので、詳しくは後日説明するが、予後解析法の1つとして取り入れられるようになったのが、予後予測因子を使った多重遺伝子診断だ。その方法は大きくRT-PCR法とDNAマイクロアレイ法の2つがあり、前者の代表的なものがOncotype DX、後者の代表的なものがMammaPrintである。

というわけで、全身療法は上記のさまざまな分類を用いて、治療方針を決めるようになっている。基本的には
・ホルモン療法(抗エストロゲン剤など)
・化学療法(いわゆる抗がん剤など)
・分子標的療法(ハーセプチンなど)
の単独または組み合わせになるが、どのように組み合わせるかは次回に書いてみたい。

そして、こんなニュースを読んでげっそり……。というか、最近の乳がんは、初期治療で抗がん剤を使う症例が減ってきてるように感じるので、必ずしも抗がん剤を治療費に上乗せしないでもいいと思うんだが、やっぱりフルコースでのトータルがわかりやすいか。特に、抗がん剤に感受性が低いとされるサブタイプには、基本的に抗がん剤は用いないというのが、最近の風潮っぽい。その反面、どうして日本は乳がんによる死亡がこんなに高いんだろう?というのは、不思議でもあるんだけど。まあ、現状の生存率は、10年であれば、2000年頭であり、その頃はまだハーセプチンも使われてなかったわけだから、10年後には、また違った数字になっているんだろうし、大きく改善されるといいなと思っている。
日本においては、手術の断端陽性の基準も、欧米に比べると厳格だから、局所コントロールは厳しくできてるだろうし、全身療法もかなりガイドラインに則ってるって感じがするし。なのに、生存率が改善してないのはなぜなんだろう。そのあたりは、もう少し調べていきたい。あと、ザンクトガレン2013の報告をちらっと見かけたが、2011年とあまり変わってない感じがした。サブタイプ分類の呼び名がよりわかりやすくなり、より遺伝子発現解析の結果を反映しているような感じになったのだろうか。
しかし、Oncotype DXは高いです。MammaPrintもですけど。早く保険収載されるようになればいいのに……と思います。